【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-5 広がる波紋は朱を広げゆく

梨花が牽制して攻撃を加えるが、相手はただ移動しているかのように避けていた。

「もう、本気で当てっからね!」

その後に撃ち込んだ攻撃に合わせてあたしも攻撃を加えたがどれも当たらないどころか薬品の瓶が割れた後に溢れる有害な煙の範囲も把握して避けていた。

「くそ、初見のはずなのに避けれるってのはどういうことだ」

「ならこれでどうよ!」

衣美里がシオリの近くで武器である尻尾を振り回し、相手が避けた先に梨花が攻撃を加えた。

シオリは服から伸びる帯で攻撃を弾いた後、既にれんの追撃が届いていた。

しかし器用にもう一本ある帯でれんの攻撃を弾いてしまった。

「まじですか!」

「もう一声が足りなかったようだね」

シオリは衣美里へやり返すかのように近くで帯を振り回したが、衣美里はふわっと飛び上がって避けた。

そのあとシオリは梨花とれんへ向かって雷を飛ばした。腕からと、時間差で二本の帯からほぼ同時に電撃が飛ばされた。

梨花とれんはその場から動かなくても当たることはなかったが、雷は見事に2人の周囲に当たっていた。無理して避けていたら当たっていただろう。

そしてここまでの流れは完全に3人が仕掛けた攻撃のやり返しだった。

「あの一瞬でコンビネーションを真似たのか」

「真似されやすい方法じゃオリジナリティも面白さもないよ!」

シオリは近くに束ねられてあったパイプを二本抜き取り、あたしらの方へ投げ込んできた。

その後に何本も投げ込まれたが、鋭利さがないはずなのに着弾地点にあるコンテナを貫通していた。

「あれやばすぎっしょ!」

「見りゃわかるわ!」

そう言ってあたしらは逃げていると無意識に4人でまとまった場所にいた。

その周囲へパイプが半分に切られて計4本となってあたしたちの周囲の地面へ突き刺された。

塗装が剥がれたパイプの切れ目にはよく電気が通る。

「しまった。みんな、パイプの上に立て!」

「な、そんな器用ことできないよ!」

「魔法少女なんだからできるに決まってるだろ!」

「無茶言い過ぎ!」

そう言ってあたしたちはシオリの突き刺したパイプの上に立った。

しかしこのままではどのみち雷が直撃してしまう。

[衣美里の合図でコンテナへ飛べ!]

[ちょっとみゃーこ先輩無茶ぶりっしょ!]

[いいから相手見ろ!]

[ああもう、いくよ、せーの!]

流れで衣美里が合図を出したが、みんなしっかり反応して近くのコンテナに手をかけたり、武器を刺したりしてコンテナへと取り付いていた。

実は衣美里が流れで出した合図と同時にシオリは出力の強い雷を4本のパイプへ落とし、いつの間にか地面に巻かれていた砂鉄を通して地面には電撃が走っていた。

あのまま地面にいても、パイプの上にいてもただでは済まなかっただろう。

あたしらがタイミング良くコンテナへ飛び移ると思わなかったのか、シオリは驚いた表情をしていた。

「おかしいな、タイミング読むほどの能力を持っているとは思えなかったが。想像とは違って少し嬉しいよ」

「エミリーすっごーい!相手ベタ褒めじゃん!」

「マジで!超テキトーだったんだけど」

本人はそう言っているが、衣美里の勘はいいとあきらから聞いていたからな。頼ってよかった。

「でも助かったぞ衣美里」

「本当!?んじゃこのノリでみゃーこ先輩とのドキドキ化学見せちゃうから!」

そう言うと衣美里はいきなりあたしにコネクトしてきた。

「んな!急すぎんぞ!」

「みゃーこ先輩もやったしお返しだ!」

あたしは衣美里からのコネクトを利用して相手を楽しませる方法をすぐに思いついた。

[お前達、奴へ私が目眩しを使うからその間に手渡す薬品を周囲に配置してくれ!]

[みゃこ先輩なにする気?!]

[なに、やつを楽しませるための仕掛けさ。いいか、薬品はこぼすんじゃないぞ!]

[は、はい!]

「さあ、反撃させてもらうぞ。来れ化学反応!」

あたしは衣美里の魔力が篭った薬品をこれでもかとシオリの周りに投げつけた。四方八方から催涙性のある目くらましの煙が出るだけではなく、衣美里が使える幻惑の力が働いて物理的に防げても精神的に目がくらむ状態となる。

いくら煙の挙動を把握しているシオリでも、周囲に満遍なく巻かれたら混乱して上に飛び上がることすら忘れるだろう。

さあ準備は整った。

あとはシオリが火を入れるだけだ。

[みんな離れとけ!]

煙がかった中心地で煙を払うように雷の衝撃波が発生するとそれと反応するかのように周囲に3人が配置した薬品が一斉に爆発した。

爆発音こそは大きかったものの、地面をえぐるほどの威力はない。しかしこの爆発で発生する熱量自体は大きい為、火傷では済まないほどの大怪我を負うことになる。

「うおー!すっごい眩しい!」

「小さい瓶に入った、薬品も、こんなに、恐ろしいものになるん、ですね」

「みゃーこ先輩、あの薬品って魔女に使うヤバいやつ?」

「んなわけあるか。実際に化学実験で使用される薬品ばかりだ」

爆心地からは笑い声が聞こえてきた。

「そうかい、魔力で生み出していない薬品だけで皮膚を爛れさせるほどの熱量を生み出したのか。
これは薬品の扱いに長けてなきゃつまらない爆発しか起きないだろうに」

そう話すシオリは得意なシールドを張らずにモロに攻撃を受けていたようだ。

服は所々焦げていて、口にした通り所々がただれた状態だった。

「みゃこ先輩、あたし痛々しくて見ていられないんだけど」

「…実験には危険がつきものだ。最悪はああなるから細心の注意が必要なんだ」

「危険だって知っていながら使うとはとんだマッドサイエンティストだ。予想もできない事が立て続けに起きて楽しくなってきちゃったじゃないか」

「まだ満足できないか」

「あったりまえじゃない!」

シオリはれんに対して迫り、攻撃を庇おうとして飛び出した梨花とれんが一つの倉庫へと吹っ飛ばされてしまった。

その後シオリが間髪入れず素早く衣美里へ迫ったら反射的にあたしは衣美里を庇った。

あたし達も梨花とれん同様に倉庫へ突き飛ばされてしまった。

帯二本で2人の魔法少女を吹き飛ばしてしまうほどの威力を実感し、相手の底知れない実力に恐ろしさを覚えてしまいそうだった。

倉庫内には追撃でいくつか鉄塊が飛んできたが倉庫内の積荷にあたるだけで誰にも被害が出ていなかった。

「みんな、無事か」

「大丈夫、ちょっと擦りむいただけだし」

「大丈夫、です。はい」

「みゃーこ先輩、あの子満足させるってハードルバリ高と思うんだけど」

勝ち目がないから賭けてみたが、あらゆることに底がないと理解した今では無謀だと理解していた。

どこだ、どこで気づけばこいつらを巻き込まずに済んだんだ。

そう考えていると、倉庫の周囲からは何か重いものがいくつも押しつけられる衝撃が伝わってきた。

扉から漏れていた光が見えなくなっていると言うことは、まさかコンテナを押し付けているのか。

完全にあたしらは逃げ場を失ってしまったようだ。

倉庫の上からはシオリの声が聞こえてきた。

「なかなか楽しかったよ。楽しませてくれたお礼に、そこから無事に出られたらお臨の魔法少女の居場所を教えてあげる。
時間は1分だよ。はい、スタート」

きっと倉庫はコンテナで覆われている。

一番突き破りやすいのは天井だが、安直に出ると相手の待ち伏せを受け入れに行くようなものだ。

コンテナは梨花の攻撃で突き破れないこともないが、倉庫群の被害は甚大なものとなるだろう。正直、この街の経済状況へ悪影響を及ぼしてまで生きようとも思わん。

「んっもう!扉歪んじゃって開きもしないよ」

「外からの光、入って来ないから暗いのですね」

「それにこの倉庫煙いし煙かかったみたいになってるし」

煙?

慌てて周囲を見渡すと積荷に書かれていた文字で察した。

このままでは全員助からない!

幸いにも中が空のコンテナを発見する事ができた。

せめて巻き込んだあいつらだけでも。

「おいみんな、一旦身を潜めるからそこのコンテナに入れ!」

「わ、わかった!」

「・・・みゃーこ先輩?」

れんと梨花は素直にコンテナに入ってくれたが、衣美里の動きはどこかぎこちなかった。

「ほら、みゃこ先輩も早く」

あたしは気取られる前に扉を素早く閉めようとしたが、衣美里が足を挟めて閉じられないようにした。

「やっぱりみゃーこ先輩、外に1人で残る気っしょ」

「衣美里足をどけ!時間がないんだ!」

「1人で残る必要ないでしょ!」

「外からじゃないと完全にロックできないんだよ!お前達を閉じ込めるわけじゃないから安心しろ」

「んじゃ入りゃいいじゃん!」

「それだと爆風でみんな死ぬぞ!」

思わず口にしてしまった。

頑丈なコンテナとはいえ、扉がロックされていなければ内部へ爆風が入り込んでただじゃ済まない。だがロックするためには、外に誰かいないといけない。

それが、あたしと言うわけだ。

「嫌だ!みゃこ先輩も入って!」

「聞かないやつらだな!どけと言ってるんだ!」

衣美里だけでなく梨花、れんと扉の隙間に指を通してこじ開けようとしてくる。

もう時間がない。

そんなとっさに思いついてしまったからか、あたしは大切な後輩達をコンテナの奥へ突き飛ばしてしまっていた。

情けないな、後輩を突き飛ばしちまうなんて。

無事だったら、謝らないとな。

「「「みゃーこ先輩(みゃこ先輩)(都先輩)!!」」」

ガシャンッ

 

扉が閉じられて間も無く、倉庫内では地面へ突き刺さる金属音がした後、爆発が発生しました。

倉庫内にいた私達ですが、爆発による振動でコンテナの壁に叩きつけられてしまい、数分間気絶してしまったようです。

気がつくとコンテナの扉が歪んでいて、外の夕日が漏れてきていました。

身体中が痛い中、外へ出るとエミリーさんと梨花ちゃんが既にいました。

倉庫内は真っ黒に焦げていて、所々燃えていました。

天井は大きく口を開けていて、私たちの入っていたコンテナは外へと吹き飛ばされてしまっていたようです。

出入口に配置されていたコンテナは爆風で遠くへ飛ばされていました。

そのコンテナの一つを見て、私は、大きな絶望感を味わうことになります。

「みゃーこ先輩!」

エミリーさんはすごい勢いで都先輩のもとへ向かいますが、都先輩はコンテナに打ち付けられ、コンテナには放射状に血が飛んでいました。

魔法少女姿は解けていて、制服は血だらけで、所々焦げていました。

都先輩自身はと言うと、身体中から血が出ていて、真っ赤で、火傷もひどい状況でした。

「みゃーこ先輩、返事して!答えてよ!」

「エミリー落ち着いて!ソウルジェムは無事だから!まずは調整屋に連れて行こう!」

梨花ちゃんとエミリーさんが話している中、私は張り紙がつけられた令さんのカメラが都先輩のそばにあるのを発見しました。

実は、都先輩がコンテナを閉めようとしている時、すでに令さんのカメラがなかったのです。

カメラは外から見た感じ無事であり、保存された画像を見ると、綺麗に私たちと戦った魔法少女に関わる写真が全て消されていました。

そして張り紙の内容は、令さんがいる場所を示したものでした。

それと一緒に、こんな一文も。

“目的は果たしたから令っていう魔法少女の隠し場所を教えてあげる。あまり余計なことに手を出そうとするんじゃないよ。先輩みたいになっちゃうからね
シオリ”

私は梨花ちゃんとエミリーさんに一声かけて、令さんのいる場所へ急ぎました。

令さんがいるという倉庫の扉を開くと、令さんは確かにいましたが、周囲は何か爆発したような跡がいくつかありました。

令さん自身は擦り傷がひどく、意識がありませんでした。しかしソウルジェムは無事です。

そのまま令さんを連れて、私は梨花ちゃん達を追うように調整屋へと向かいました。

夜になっても調整屋は開いていて、そこにはみたまさんとももこさんがいました。

事情を伝えると、すぐにいろはさん達も駆けつけ、いろはさんから灯花さんへ話を通してもらえたようで、里見メディカルセンターの一室に緊急入院という形で都先輩は回復を待つことになりました。

ここからは話を聞いただけですが、令さんのお見舞いに来た郁美さんは、気がついた令さんと無事だったカメラを持ちながら、包帯だらけの迎え側にいる都先輩を見て、とても大きく泣き叫んだそうです。

都先輩の両親へは港で起きた爆発事故に巻き込まれたと説明され、この一件は幕を閉じます。

中央と南のまとめ役が動けなくなったため、神浜マギアユニオンでは代理のまとめ役を誰にするのか緊急会議が行われたのですが、立候補者も出ず、いろはさんとやちよさんが時々様子を見にくるということで話題は終了しました。

こうなってしまった経緯は私たちの記憶でしか残っておらず、明確な証拠がないため、シオリさんを一方的に責めるという人はほとんどいませんでした。

私たちはどうしていれば、みんな無事に丸く治ったのでしょうか。

私たちがいないうちにあったという調整屋の襲撃以来、みたまさんの不調が続いています。

私は、もっと悪い出来事が起きてしまう予感がしてなりません。

今はただ、都先輩が元気になることを祈るばかりです。

 

 

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