【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-4 たった一敵から始まる波紋

糸を使う魔法少女と雷を使うという魔法少女が危険だと伝えられた集会を後にし、あたしは電話がかかってきた相手のもとへと急いだ。

電話をしてきたのは牧野郁美。元マギウスの翼だったがマギウス解散後はよく行動を一緒にするようになった1人だ。

今日はかりんの様子を見に行くと言っていたはずだが、あの電話越しから伝わる焦りから何かがあったと考えるのは容易だった。

後輩達も一緒についてきてしまっているが、構わず郁美の所へと急いだ。

「郁美、傷だらけじゃないか。何があった!」

「ひなのさん。令ちゃんが、令ちゃんが!」

「令がどうしたって。まずは落ち着いて話せ」

「令ちゃんが魔法少女を襲った相手の写真を撮ったんだけど、そのあと撮られた相手に襲われて、駆けつけたんだけどこれをひなのさんに届けろって令ちゃんが」

「一回落ち着こ!」

梨花とれんが郁美を落ち着かせている間、あたしは郁美から預かった令のカメラに保存された画像を見ていた。

人のカメラの中を勝手に覗くのはよくないが、あたしに渡すよう言ってきたという事は何かしら意味があるのだろう。

最後に撮影された写真には粟根こころ、加賀見まさらを襲う小柄の魔法少女の姿が捉えられていた。

「この魔法少女が令ちんを襲った魔法少女?見た目みゃーこ先輩よりも小さいじゃん。もしかしたらななか様が言っていた魔法少女の1人じゃない?」

「おまえななかには様付けなんだな」

しかし、衣美里の言っている事は確かかもしれない。近頃はマギウスの残党ぐらいしか暴れる奴はいなかったし、中央区で被害が出たというのなら話を聞くしかあるまい。

「令が伝えたい事はわかった。それで、令は一体どこにいたんだ」

郁美が言うには、令は追いかけられてそのまま南凪区まで逃げていたらしい。しかしその途中で追いつかれてしまったと言う。

郁美は怪我が酷かったので一緒に来ないよう伝えておいた。

「おまえ達まで来る事はないだろ」

「だって相手ってすっごい強いって言ってたじゃん。人数多い方が逃げる確率上がるでしょ」

「ダメって言われても、私はついていきます。はい」

「全く、れんは強情なとこが梨花に似ちまったな」

「あ、ひっどーい」

そうくだらない話をしていると倉庫群に入った。ここが最後に令を確認できた場所だという。
ただしここの倉庫群は観光名所ともなっていて人も多い。そんな中で令が襲われるとも思わない。

「おい衣美里、本当に郁美がここで令を見たって言ってたのか」

「おっかしいなぁ、いくみんは倉庫群で見たのが最後って言っていたんだけどなぁ。
りかっぺ、倉庫群って意外に何か言ってなかったの?」

「あっ」

「どうした、れん」

「そういえば、コンテナがたくさんある倉庫群って言ってた気がします。震えた声だったので、気のせいかもしれませんが」

コンテナが集まる倉庫群といえば南凪区の南側にある港のことだろう。あそこは場所によっては人気がないからな、争ったとすればきっとそこだろう。

「おそらく南の港のことだろう。ここじゃないならそこしかない。
しかしもう日が落ちそうだ、おまえ達はもう家に帰れ」

「ちょっとちょっと何言ってるのみゃーこ先輩、危ない相手と会うのに1人とか危ないっしょ」

「そうだよ、別に令さんを襲ったヤバい魔法少女を倒すわけじゃないんでしょ」

「おまえら、親が心配することも考えろ」

「ダイジョブだって、怒られたらごめんなさいするだけだし」

衣美里がそう言った後、梨花もれんも揃って頷きやがった。

ここから中央区はともかく、新西区までどれだけ距離があると思ってるんだ。

「強情な後輩ばかりで私は疲れるよ」

「それ本人の前で言う?」

「分かったよ。ついてくるからには無事に帰られるようにするんだぞ」

「「「はーい!」」」

結局4人でさらに南へ向かうことになり、本当の目的地だと思われる倉庫群に着いた頃には日が水平線に隠れようとしている頃だった。

「来たはいいが、港となると敷地が広いしどこにいるか見当もつかないぞ」

「あれ、コンテナの上に誰か、いるような」

れんが向いている方向には写真に収められていた小柄な魔法少女が立っていた。

待っていたというのか。

「その首からかけているカメラ、あの写真家の魔法少女のやつだよね」

小柄な魔法少女はそう話しながら4段ほど積み上げられたコンテナの上からゆっくりと降りてきた。

「おまえが令を襲った魔法少女か。なんで令を襲った」

「確証もなく犯人扱いされても困るんだけど」

「残っている写真とここに来るまでに聞いた証言で十分わかるさ。それにおまえは要注意人物だと神浜中に伝わっているぞ、紗良シオリ」

「ふーん、ななかさんが早速周知させたってことか。私も有名人になっちゃったかな」

「答えをまだ聞いていないぞ。令をなぜ襲った。令はどこにいった」

シオリという魔法少女は海に背を向けるよう移動しながら答え始めた。

「シオリはプライバシーの侵害だって写真の削除をお願いしただけだよ。なのにその令って子が写真を拡散させるっていうもんだから実力行使に出たんじゃないの」

「ただ写真を撮られたのならそういう話で納得はいくが、中央区の魔法少女を襲っている写真だから納得はいかない。中央区の魔法少女を襲ったのはなぜだ」

「質問が多いね。シオリ達の目的を知りたいっていうから正直に話したらいきなり襲いかかってきたからさ。正当防衛ってやつじゃない?」

襲われた中央区のメンツは粟根こころと加賀見まさら、江利あいみだろう。

仕掛けるとしたらまさらだろうが、まさらが手を出すのはこころに何かあったからか。

「ねえ、良かったらあーし達にその目的話してよ。それでまともな内容だったら疑いも晴れるっしょ」

衣美里、いきなりすぎるぞ!

「いいよ。真っ直ぐな好奇心、嫌いじゃないから教えてあげる」

教えてくれるのか!

「シオリ達はね、ある物質に因果を集め、そこに希望を集めて魔法少女を誕生させるのが目的なんだ。その願いはもちろん、自動浄化システムが世界は愚か宇宙にまで広げること。
これがあんた達神浜の魔法少女にはできない自動浄化システムを広げる方法さ」

「魔法少女を誕生させるだと。それは、素質のある少女を生み出すと言いたいのか」

「そうよ。でもその物質を利用する際に膨大な呪いが周囲に溢れちゃうの。その呪いを、この街の人間に押し付ける必要があるの」

「おい待て、それは一般人を犠牲にして自動浄化システムを広げるってことじゃないか」

「そういうこと。あの時は黄色い硬い子が両親も巻き込まれちゃうって泣いちゃってから透明感ある子が襲いかかってきてっていう経緯ね」

状況は把握した。

シオリのいう計画は決して擁護できるものではないが、手を出したまさらにも非がある。一方的に責めるわけにもいかないな。

「そうか、中央区の魔法少女が迷惑をかけたな。それだけは謝っておこう。
だが、おまえ達の計画とやらは擁護できん。この話は神浜の魔法少女へ伝えることになるが、おまえが令を返してくれればおまえの写真をカメラから消すよう令にお願いする。それで文句はないだろ」

「相手のことを考えられる魔法少女は好きだよ。でも令という魔法少女の場所は教えられないね」

「無事なら無事で教えてよ、それだけでいいじゃない!」

「教えて欲しいなら、シオリを楽しませてよ。満足したら返してあげる」

今思えばこいつはずっとここで私たちを待っていた。もしかしたら元から戦う気でいたのかもしれない。

何が目的かわからない分、危険な相手だ。

「これ以上話し合いでは進まないようだな。それで、お前は私たちにどうしてほしいんだ」

「なに、もしかして察しが悪い感じ?戦って楽しませてよって意味だったんだけど。シオリは攻撃されるまで動かないから、諦めて帰るのか、力尽くでも取り戻すか判断はあなた達に任せるよ」

[みゃこ先輩、令さんを助けるために戦うしかないんじゃない?]

[いや、こちらから攻撃すると相手の思う壺だ。また正当防衛だと言って非を私たちに押し付けられるだけだ]

[では、どうすれば]

相手は手を出さないとは言いつつ、戦いたい気持ちは大きいだろう。何か挑発して手を出させれば言い逃れできない状況となるだろう。

言い方は悪いが、相手を挑発できる奴が今近くにいるのは幸いだな。

[衣美里、お前の得意なダベりとやらで相手を説得してくれないか]

[ええ、話まともに聞いてくれっかな]

[エミリー、ファイト!]

[梨花っぺまで!?]

[大丈夫だ、お前ならできるって]

衣美里は不安そうな顔を少ししたが、すぐに笑顔になってシオリへ話しかけ始めた。

「ねえシオリンさぁ、もっと会話してお互いの理解深めるってのはどうよ」

「シオリンって、シオリの目的は話したはずだよ。それに対してあんた達が容認できないんじゃ、これ以上話したってわかろうとしないでしょ。それに令って子はいいのかい」

「まあ大丈夫っしょ。無事なら無事で、話終わった後迎えに行けばいいし。まあまあ話してみればみんなわかってくれっから。そこから降りてきてゆっくり話しようよ」

そう言いながら衣美里はシオリの場所まで行って隣に立った。接近にも程があるぞ。

「いやー、近づいてみるとみゃーこ先輩より小さいね。もしかして、まじもんの小学生だったり」

「お前…」

「あ、もしもうちょい年齢上だとしても大丈夫だから。この街、年齢詐欺じゃねって魔法少女いっぱいいるから!
そうだ、今の勢いで会いに行こうよ!そのままのノリで、シオリンのやりたいこと、みんなに伝えようよ!」

バチンッ!

衣美里のいた場所に電撃が走ったが、衣美里はすぐに避けて無事だった。

「ちょ、何何?!」

「衣美里、大丈夫か!」

「話す度に脳波に影響してきやがって。耐えられずに手が出ちゃったじゃないか!」

「予想した結果とは違ったが、これで最初に手を出したのはお前ってこよになったな。結果はどうであれ、望み通り戦って満足させてやる」

あたしは三人に戦闘体制に入るよう指示した。

「行くぞ!」

「これカレンに怒られるのは必死かなぁ」

 

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