またこの展開となりました。協力関係となりたい相手に対して、ななかさん達は必ずというほど相手と一度は一戦を交えてしまうのです。
私はななかさんと戦ってチームに入ったわけではありませんが、あきらさんも、美雨さんも一度戦ってななかさんについてきた人たちです。
そういえば私、ななかさんと面と向かって戦ったことがないことに気がつきました。
魔法少女になる前も、後も守られてばかりな場面が多いような。
私たちはお店へ支払いを行った後、人気のない路地裏まで来ました。
「さて、手合わせ願おうじゃない。まとめてかかってきても構わないよ」
「随分な自信ネ」
「いいでしょう、皆さん始めてください」
「先手はぼくが!」
「続けるヨ」
いつもの通り、先にあきらさんと美雨さんが前へと出ます。
二人は格闘を得意としているため前へ出るのは必然ですが、スピードがあるため撃って下がるという切り替えも早いです。
二人は力強い拳を繰り出しますが、シオリさんが操る帯には傷一つついていませんでした。
その帯は巧みに角度を変えていて、四方八方から来る攻撃に対応していました。
二人が一歩下がった後、私は武器を構えて矛先に貯めた力を地面へと叩きつけました。この時、大まかな相手の弱点を掴んでいたからか、シオリさんはワンテンポ対応に遅れたかのようですが、しっかりと回避されてしまいました。
そこへななかさんが間髪入れず切り込みましたが、今度は腕にある宝石から光る盾のようなものを形成してシオリさんは身を守りました。
「こっちを使わないといけなくなるとは思わなかったよ」
ななかさんも下がり、私たちは防衛体制へと入っていました。
シオリさんはあきらさんの方へ向かい、帯を素早く、しなやかに叩きつけて行きました。
あきらさんは防御姿勢で耐えていましたが、どんどん動きが鈍くなっていきました。
「まずいですね。あきらさんそこまでです。戦線離脱してください」
「わ、わかったよ」
あきらさんは後ろに下がってはこれましたが、座り込んだ後に動けなくなってしまいました。
「いい判断だね。あのまま戦っていたら何もできずに終わっていただろうね」
[あきらさん、体の様子は]
[完全に痺れたみたい。ごめん、動きそうにない]
[なら、私が]
私があきらさんを回復させようとすると何か素早い気配を感じました。
「かこさん!そこから離れてください!」
気づいた時には手遅れでした。足元には鉄釘が刺さっていてそこから電気が流れて私はダメージを受けたと同時に体が動かなくなってしまいました。
「遠距離できるヒーラーとは優秀だね。ただ、反射神経はまだまだだね」
「あんたも遅いヨ」
気づいた頃にはシオリさんの真後ろに美雨さんがいて、勝負ありかと思われました。
「したっけ勝てるかい!」
美雨さんは寸止めで終わる気だったのでしょう。しかし自らシオリさんは両手を美雨さんの爪へ突き刺し、帯でそのままみぞおちを突きました。
「両者そこまで!」
ななかさんは戦いをやめさせました。
さらなる追撃を用意していたのか構えていたシオリさんは魔法少女姿を解きました。
腕の傷を治すために痺れた体を何とか動かしてシオリさんの傷を癒しました。
「ありがと、かこさん」
シオリさんはすぐ元どおりに自由に動かせる腕へと戻っていました。
「お強いですね。私たちの完敗です」
「シオリに傷をつけておいて完敗だって言われると私の方が情けなくなるんだけど」
「いいえ、あそこで止めていなければ美雨さんは危ない状況になっていたでしょう。私も手のだしようがありませんでした」
「何言ってるのさ。十分強いよ、あなた達」
そう言った後、シオリさんはななかさんへグリーフシードを渡しました。
「これはガサツな誘いに乗ってくれたお礼だよ。協力するかどうかは仲間と話し合ってから報告するね。今日の夜、私とあなた達があった場所に来れるかしら」
「わかりました。前向きな返事をお待ちしています」
シオリさんはそのままどこかへと行ってしまいました。
「ななかさん、シオリさんは」
「あの強さは間違いありません。この神浜では、誰も対抗できないでしょう」
話は戻ってみんなで集まっているななかさんの家。ここまでの話でこのはさん達はいろいろ時になることがあったようです。
「そのシオリって子、危なっかしくて怖いんだけど」
「そうね、ななかさんからも怖い発言がよく出るけど、シオリさんもなかなかね」
「あら、私は普通に話をしただけですよ」
「ななかのいう普通は普通じゃないと思うヨ」
「そうでしょうか」
「んでんで、そのあとの返事ってどうだったのさ!」
実はその結果を私とあきらさんは知らされていませんでした。
結果を聞きに行ったのはななかさんと美雨さんだけでした。私とあきらさんはこ来ないよう釘を刺されていたもので。
「ではお話ししましょう。結末と、今後の活動について」
夜に会うという時間が曖昧な中、ななかさんは18時の暗くなり掛けの頃に指定の場所へ行き、少し待った頃に声をかけてきた少女がきたとのことです。
「あなたが、常盤ななかさんですね」
「どこかでお会いしたでしょうか」
「私はシオリの仲間、日継カレンだ。あなた達からの協力関係についての話は聞かせてもらったよ」
「そうでしたか。シオリさんはご一緒ではないようですね」
「シオリにも都合があるからね。仕方がないさ。それで、協力関係について何だが」
そう話したあと、カレンさんは魔法少女姿になったあと話を続けました。
「協力関係は断らせてもらう。実力が釣り合わないとか、目的が違うというわけではない。あなた達は少々相手を探りすぎる癖があるとシオリから聞いてね」
「探られるとまずいことをしている、そういう意味ですか」
「ななかさんには伝えておくが、私たちは既に魔女化しないシステムを世界に広げる方法を知っている。そして実現も可能だ。
だがこの方法は、絶対あなた達神浜の魔法少女と争ってしまうような方法だ。だから協力できないというわけだ」
「話してみないとわからないこともあるかと思いますが」
「忠告しよう。これ以上私たちを探るんじゃない。私たちに触れすぎるとあなたも、仲間も傷がつくところじゃ済まないよ。
なに、話す機会はいずれ来るだろうさ」
ななかさんは隙を見て変身しようとしましたが、周囲に鋭利な糸のようなものが張られて変身することを躊躇していました。
「いい判断だ」
カレンさんはななかさんへ背中を向けて、ななかさんへこう伝えたとのことです。
「神浜マギアユニオンへ伝えておいてくれ。外から来た魔法少女を失望させ続けることしかできないのなら、私たちは動くと」
美雨さんへアジトを探らせる予定だったようですが、ななかさんは追跡をやめさせます。
結果は残念なところか、神浜に危険が訪れてしまう予告まで受け取ってしまったのです。
「シオリさんとカレンさん。彼女たちは神浜の魔法少女では魔女化しないシステムを世界に広げるのは不可能だと踏んでいるようです」
「相手はハッタリで知っていると言ってきた可能性はあるけれど」
「彼女たちの実力は計り知れません。探ってみるしか方法はありませんが」
「ななかさ、一人で探ろうなんて思うんじゃないよ」
ななかさんは少しの間黙ってしまいました。
「私は今度の神浜マギアユニオンの集会へ参加し、今回のことを皆さんへ周知しようと思います。彼女たちへ出会ってしまっても、目撃したとしても関わることはないように」
事態は絶望的でした。
シオリさんとカレンさん。
彼女たちとまともに話し合いをできる日はくるのか。そして、魔女化しないシステムを世界に広げる方法とはどんな方法なのか。
この状況の中、私はあまりにも無力で情けない気持ちでいたのでした。
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