次元縁書ソラノメモリー 1-14 みんながみんな独特の発想を持っているとは限らないからね

干渉液を扱っているキエノラという人物は聞いたことがない人物。

ソラからここにくるよう伝えられただけで、実は下調べなんて行なっていない状態。調べる時間自体そんななかったし。

「芸術家にしては平凡な店構えね」

「みんながみんな独特の発想を持っているとは限らないからね」

「まあいいや、干渉液とやらをもらいに行こうよ」

ぼくは頷いて恐る恐る店の扉を開いた。

真ん中、右左と部屋を見渡してみると赤や緑で装飾された絨毯が敷いてあって、正面を向くと大きな暖炉の上にいくつか鉱石が置いてある。

床とかにも鉱石が置かれていて、右隣には植物と泡立つ緑色の液体が入った試験管が並べられていた

「あのー、キエノラさんいますか」

ブリンクが大きな声で尋ねて見ても、返事がなかった。

「留守かな」

そう思っていると二階から何かが転けた音がした。

それからせわしなく足音が一階まで迫ってきた。

「いやぁ悪いね、ちょっと二階で用事してたんだ。わたしの名前を読んだのは君たちかい」

「じゃあ、あなたが」

「そう、わたしがキエノラだよ。名前で呼ばれるのは慣れていないんだ」

キエノラ茶髪の細身な女性で、肌は黄色気味の肌色だけど、指先に近づくにつれて色が真っ白になっている。

「あの、二階ですごい音がしたんですけど大丈夫ですか」

「いやね、少し前に新発見に出会って二階でハッスルしていたんだよ。忘れないうちにメモらないとってね。まあ、なんともないよありがとね」

キエノラは先ほど目に止まった唯一植物がある場所の椅子に座ってこっちを見た。

「わたしを尋ねてきたということは、何か依頼があるのだろう」

「そうそう、私たち干渉液が欲しいのよ」

ブリンクがすごくフレンドリーに接している。初対面にもそんな対応するのか。

「干渉液を欲しがるとは、さては悪いことに使おうとしているな」

「い、いえ!違いますよ」

「んぁはは、大丈夫ちょっとしたコミュニケーションさ」

ニコニコしながら話していたから、冗談だろうなという感じはした。

「さて、干渉液についてなんだけど、実は先ほど見つけた新発見のために材料が多めに必要となってね。その材料の調達を手伝ってくれれば干渉液を渡すよ」

ぼくたちはキエノラから干渉液に必要な材料を教えてもらい、植物屋が集まる場所へ向かっていた。

干渉液に必要な材料は複数あるんだけど、今足りないのはドコサーという野草だ。そこら辺じゃ取引されていない植物だから、ゲミニカに店を構えているハッカという人物に話を聞けばいいよ。

「触れ物」からの依頼できたといえば素直に教えてくれるはずさ。

そうそう、ペシャンも持ってきてくれると嬉しいね

「なんかおしゃべりな人だね」

無音が苦手なのかってくらいキエノラは色々話しかけてきた。

彼女の能力を知らないからなんとも言えないけど、人によっては疲れる人かも知れない。

「きっと新発見とやらに興奮していたんじゃない?」

「なるほど、なら仕方がないね」

納得するんだ。さっきまでブリンクもそうだしそりゃそうか。

ハッカという人物のことについて聞いて回っていると、どうやら染料になる植物に詳しい人物らしい。色を組み合わせる能力を持っていて、植物でできた色というのは相手の気持ちを落ち着かせる力があるらしい。

ハッカの店はゲミニカの中心、ゲミ二カ統括城からすぐの場所にあった。ハルーで飛べば近かった。

ハッカを尋ね、「触れ物」の依頼できたと伝えると少し悪そうな顔をしながら話してきた。

「さてはあんたたち、キエノラがどんなやつか知らないでお使いをさせられてるね?」

確かに下調べなしできていたから本当の彼女をぼくは知らない。

「まああいつはおしゃべりだし、自分から話し出すでしょ。ただ、あんまりあいつのお気に入りになるんじゃないよ。何でもかんでも知られちゃうからね」

そう伝えられた後、ドコサーが生息している場所を教えてもらった。

ドコサーはゲミニカの北部にあるディモノスリンの奥深くだよ。

周囲が真っ暗になるくらい奥にあるんだけど、ドコサーを摘んだら必ず日光が当たらないようにしてね。

少しでも日光に当たるとしおれちゃって使い物にならないから注意だよ

ディモノスリンという場所があるのは知っていたけど、立ち入るのは今回が初めて。

何でも森の中はとても暗いらしく、手持ちライトでは手元が明るくなるだけというくらいだという。

そんな森の中には所々に光る苔やキノコ、花といった植物があるため、それらが唯一の目印らしい。

「ねえ、こういう森って絶対行方不明になるやつだと思うんだけど」

「行方不明にはなりたくないなぁ。ブリンク、離れないように手を繋いで、ひたすらまっすぐ進もう。それならまっすぐ戻れば間違いなく戻ってこれる」

「わかったけど、不安しかないな」

ぼくとブリンクは手を繋いで恐る恐る森の中へと入って行った。

明るめの手持ちライトは持ってきたけど、本当に手元しか光らなくて役に立たない。

まっすぐ進んでいるはずだけれども、時々木の根につまずきそうになったり木を避けたりとまっすぐ進めているか怪しくなってきた。

恐る恐る歩いていると周りに水色に輝く粒子が舞い始めた。

どこかの植物から噴出されたのだろうか。

そう考えているとブリンクの足取りが極端に重くなってきたのが伝わってきた。

「ブリンク、大丈夫?」

「なんか、意識が、遠く」

ブリンクの声を聞こうとしているとぼくの意識も遠くなっていくのを感じていた。

ぼくとブリンクはその場で気を失ってしまった。

 

 

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